英語のネイティブが英語を学ぶ場合に三人称、単数、現在形でSを付く表現をたくさん覚えます。子供は単数とか現在と言う文法的な条件を知って適用しているのではありません。子供達は使い方を含めた多くの事例を覚えた結果として三人称、単数、現在形でSが付く事に気付くだけです。
実際の言語習得はルール学ぶのではなく、使い方を含んで学んでいます。その結果ルールを学ぶ必要はありません。
事例基盤モデルでは言語知識は具体的な個別事例に関する詳細で多面的なエピソード記憶から構成されています。Exemplar(事例)と呼ばれる個別事例の記憶の集まりと捉えています。つまり言語の事例はその使い方も含めてその事例を学習していると考えます。
事例基盤モデル(Exemplar-based Model)とは、脳が言語知識をどのように捉えようとするかのモデルであり、そして心理学的に我々がカテゴリー知識を捉える新しいモデルとして提唱されているものです。
事例基盤モデルは2006 年にThe Linguistic Review 誌で特集され、近年世界中で注目集めています。言語モデルです。
言ってみれば、動詞であれば使うときに変化形を考えるのではなく、それぞれの使い方に応じた事例を学習していると考えています。
何よりも、事例基盤では言語事例にパターンが“内在しています。”とは考えていません。パターンは蓄積された無数の事例つまりそれらの素性から“発見”されるものであると考えられております。これはひとまず多くの事例が記憶されていると考えないと不可能です。
事例基盤モデルでは、知識を個別事例の記憶として覚えており、それは単に個別事例が直接記憶され知識を構成しているというだけではありません。更にカテゴリーやパターンなど一般化された概念や規則として記憶されているように思われる知識でさえも個別事例の記憶のネットワークから“発見”されるものにすぎないと考えているのです。
文法のような一般規則、カテゴリーなどの抽象的な規則性は最初から内的に与えられているものではなく、個別記憶のネットワークの中で、その時々に見られる経験の集積により生じています。にすぎません。それらの個別事例は何らかの関係性、類似性によってお互いに関連づけられています。
それらの関係、類似の度合いが高い事例記憶は記憶のネットワークの中で集積を形成しており、そうした集積が一般的概念や文法として解釈されています。
言語を事例基盤モデルとして捉えるならその学習方法は非常に明確になります。つまりなるべく多くの人が使う、つまりネイティブが良く使う事例を真似て覚える事です。これは母語である日本語の習得と同じです。
脳は唯一死ぬまで成長する臓器です。すると脳の学習メカニズムは一生変わりません。言語が事例基盤である事も変わりませんから、母語も臨界期以降に学習する第二言語も基本的な学習方法は同じと考えるのは非常に自然な事です。